鳶の仕事を動画・映像は忠実に再現や撮影が可能なのか?

鳶職人や現場で働く人を映像化する時は
監督や、作り手が持っている、

『とび職人に対するイメージ』が映像として映し出される。

あまりにも現実からかけ離れている映像作品もあれば、
その仕事の凄まじさを忠実に再現しているものもあり様々である。

ここでは、鳶をテーマにその仕事を映像化した作品を紹介し、
『鳶の視点』で解説したいと思う。

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『劇場版 東京スカイツリー 世界一のひみつ』

監督: 野上純一

出演・神谷浩史、日笠陽子

スカイツリー建設ドキュメンタリー映画。
今まで誰も体験した事の無い、東京タワーの333mを超える高さ、
前人未到の領域に挑む、技術者達の仕事を
実際の建設中の映像を交えて、語ってくれます。

設計の段階から、634mまでの上棟まで。
建設中に東日本大震災に被災するも、
無事故で完成させるまでを記録した完全ドキュメンタリー。

東京スカイツリー

スカイツリー完成までの様子ということで、
鳶の仕事を中心に物語が進むというわけではない。
しかし、鉄骨建方はもちろん、タワークレーンのクライミングや、
ゲイン塔のリフトアップの様子までを、しっかりと収めている。
息をつく暇もない、見所満載、充実の60分。

鳶の仕事については、どうしても東京タワー建設と比較して話をされることが多い。
確かに、東京タワー建設当時は、大型クレーンもなく、
現場で働く鳶職人の技量に大部分を頼らざるを得なかったただろう。
しかし、当時より近年の科学が発達したからといって、
634m程の建造物が容易に建てれる程までに科学は発展している訳ではない。

第二展望台

鉄骨の総重量は41000トン。
東京タワーの約6倍の重量。
この重さはガンダムのホワイトベースに匹敵する。

狭い敷地で、地震に対する強度を保つにはどうしても必要な質量だ。
現代の科学の発展があったからこそ、実現できた634mだが、
それを扱うのは、現場の最前線で作業する、我々とび職人の技量が物を言う。

未知の領域、大自然の脅威に立ち向かい、
これだけの建造物を大きな事故もなく完成させることが出来る、
日本の技術力と志を、誇りに思う。

『劇場版 東京スカイツリー 世界一のひみつ』予告編

プロジェクトX 挑戦者たち 東京タワー 恋人たちの戦い~世界一のテレビ塔建設・333mの難工事~

出演・国井雅比古、久保純子、

(元東京タワー現場監督)竹山正明

(元鳶職人)桐生五郎

戦後、昭和32年当時の映像と写真を元に制作された
東京タワー建築のドキュメンタリー。

日本を支えた世紀の建築に、二人の男の人生を重ねて綴っている。
現場監督「竹山正明」氏と、鳶の筆頭棒芯「桐生五郎」氏を中心に物語は進行する。

大型クレーンなど存在しなかった当時、
巨大鉄骨を相手に作業している姿の映像は圧巻。
同じ鳶職人として、もはや感動を超え、涙がでる程だ。

東京タワー

ウインチを使い、ボウズデリックを組み替え、
トビキン、ケーブルトロリー、ケンカ巻き。

とび職人の技術のすべてがここにある。

機械が発達し、これほどの特殊な技術が必要とする仕事がなかったり、
これらが出来る職人もいなくなってしまったというべきか。
近年の建築現場ではあまり見る事が出来なくなった。

しかし、これらの技術は、大型クレーンが使えない環境の
橋梁架設工事等では今も受け継がれている。

実際に、東京タワーの改修工事では、
タワーの遥か上空から地上に向かってケーブルが張られており、
ケーブルトロリーを使って資材の荷揚げをしている。
東京タワー近辺をよく見ると、その様子に気がつくはずだ。

この難工事を短期間で完成させることができたのは
そのような職人の技術があってのことだが、実はこれだけではない。
東京タワーの鉄骨総量は4000トン。
この鉄骨の重量が大きなポイントとなる。
数字だけを聞いてもピンとこないがこれではどうだ。

鉄骨建方

東京タワーの高さ333mより少し背の低いパリのエッフェル塔。
エッフェル塔の高さは320.75mで鉄骨の総重量は7000トン。

塔博士、内藤多仲の設計したこの東京タワーは、
強風の影響をまともに受けないように、鉄骨をギリギリまで細くし、
さらに、ミリ単位の設計施工をすることで、地震にも耐えれる強度を可能にした。

タワー本体の質量を軽くしつつ、強度の確保を実現させることで
鉄骨施工時の難易度の軽減に大きな影響を与え、
工期を大幅に短縮させる事ができた一つの要因でもあるのだ。

鳶職人

現在のような、法律的にも、安全性も守られている環境では見る事のできない、
200mを超える高さで、安全帯(命綱)もせず、鉄骨を飛び回る圧倒的迫力の映像。
まさに、鳶の仕事の凄まじさを、感じてもらえること間違いないだろう。

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かっ鳶五郎

監督・長濱英高

出演・的場浩司

   三浦浩一、長門勇、小松みゆき

   前田高之、松原一平、大西結花

同名の漫画を映画化した1997年の作品。
浅草を舞台にした、下町の鳶と地元ヤクザを中心した物語。

主演の的場浩司さんが、ガンガン足場を組立解体。
その作業の様子はかなりリアルに表現されている。
それもそのはず。
実際に鳶の会社が演技指導し、衣装だしから出演までしたらしい。

あの、町場現場の雑然とした無機質な感じと、
街中での淡々と作業する緊張感がうまく映像化されている。

作業内容はビル改修工事の外部足場。
クレーンなどは使わずに、きん車、ロープでの生荷揚げ。
アンチの架けバラしや、壁つなぎの取付、落下養生ネット取付の様子など
全く演技としての作り物の感じはなく、まさに現場そのもの。

一見、見落としがちな細かい部分や、
足場作業の急所をとらえて、うまく表現されている。

現場で働く人が見ても、このクオリティには納得するだろう。
あーあるある!という部分と、
作品としての演出の大げさな部分との違いが見て分かるのも面白い。
まぁ現場で働く人しか、わからないだろうが。。。。

合成映像もなく、スタントや替玉もなし。

的場浩司さんが実際に
足場組立解体作業をやっている姿は見所。

作品の内容や、ストーリー上の演出としての
『鳶職』という表現は疑問を感じる部分もあるが、
鳶の仕事をよく調べ、仕事の様子をとても丁寧に表現をしてくれている。
この作品のスタッフさんの鳶職人に対する敬意を深く感じます。

鳶がクルリと

監督・薗田賢次

出演・観月ありさ、哀川翔、、宇津井健、塩見三省

   須藤元気、品川祐、庄司智春、小林すすむ

   曽根英樹、通山愛里、窪塚洋介、平泉成

   風吹ジュン、歌澤寅右衛門

いろんな映画レビューをみると、かなり酷評なこの作品。
ストーリーや設定などはおいといて、
鳶の仕事に視点をあててご紹介しようと思う。

観月ありさが工事現場に訪れるシーンがあり、
その辺りから、鳶の仕事を全面に映し出している。

現場を外から見たシーンは、実在の工事現場の映像。
いざ、現場の中に入って行くと。。。

工事用エレベーターに乗っているシーンまでは、
現場で撮影をしていたのだろう。
ちなみに、撮影に使われた現場は太平四丁目錦糸町再開発計画。
現在のオリナス、ブリリアタワー東京だと思われる。

観月ありさ

工事用エレベータからおりてからのシーンは全てセットとCG画。
あまりにもお粗末すぎる映像と作業風景に唖然としてしまう。
2005年当時では最新の映像技術だったのかもしれないが、
無理にCGにこだわらなくても、もっといい映像が撮れたのでは?

建て方の様子なども描かれているが、

まったく緊張感もなく、全てが不自然。

名の通った鳶の親方を演技指導として制作に迎えていたが、
その努力も実らず、なんともいえない映像に仕上がっている。

哀川翔
須藤元気

さらには、須藤元気がクレーンで吊られた梁に乗って、降りて行くシーンがあるが、
こんなことを現場でやったら大問題になることは間違いなし。

現代の鳶職人はこんな無意味な不安全行動はしない。

映画の演出として、危険度やダイナミック感を伝えたかったのだろうが、
こんな表現の仕方しか思いつかなかったのか。。。
とびの仕事やとび職人に対しての知識を何も持たない人がみたら
誤解を招くような軽卒な表現に、監督がなにを伝えたいのかが、わからない。

須藤元気

物語のクライマックス付近で、上部の無線持ちのポジションを

『ハヤブサ』と表現している部分があるが、
このような呼び方は実際にはしない。

おそらく、演出として、分かりやすく表現したかったのだろう。

この作品はもともと小説としてあった作品が映画化されたものだが、
主人公のポジションや、原作がほとんど変えられてしまっている。

さらには、原作で最も重要とされている、鳶の仕事のシーンは
まったく映し出されていない。。。
これでは、「鳶がクルリと」を映画化する意味が全く感じれない。

さらには、作品の内容や、ストーリー上の演出としての
『とび職』という位置づけが、あまりにもひどく、
偏見をもたれるような表現と感じるのは自分だけだろうか。。。

とてもじゃないが、鳶の仕事に対しての事前調査や、
十分な研究をしたとは思えない。
せっかく鳶を題材にした映画であるにもかかわらず、
この作品をみてもほとんどの人は、鳶の仕事にまったく興味を持てないのではないか。

作業服や腰道具にしても、あまりにも現実的ではなく、
表現ががあまりにも手抜きなように思えて仕方がない。

鳶がクルリと

一つの物語としての作品は、
見る人それぞれの感じ方があるだろうが、
鳶の仕事を映像化という部分では、
個人的には残念に感じる作品。

何も知らない人がこの作品を見て、鳶とはこういうものだ。
と誤解されるのではないかと思うと、とても悲しくなる。

あまりいい評価はしていないが、
それをふまえて見るのも、楽しめる要素になるのでは。



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