高層ビル建築には絶対不可欠な存在、鳶職人とタワークレーン
高層建築現場の一番上にそびえ立つタワークレーン。
それは高層化されている今の
日本の高層建築には、絶対不可欠な存在である。
しかし、タワークレーンがどのようにして、工事現場のてっぺんにあるのかは一般的には謎とされている。
ここでは建設中のビルのてっぺんにあるタワークレーンの謎について解決していこう。
最大吊り上げ能力70tの大型から、1tの小型のクレーンまで、種類は実に様々。
ここでは、主に高層建築現場で使用されている、
大型タワークレーンを中心に話を進めたいと思う。
タワークレーンの組立、解体作業。これも鳶職人の仕事である
正式名称はクライミングクレーンと言い、
その名の通り、自身の力で上に登っていくところから、
「ビルを駆け上がる=クライミング」と名付けられた。
機体は細かく分割された部材によって構成されており、
現場で、組立、クライミング、解体していく。
この一連の作業、主に鳶職人がこなすのだが、
実は一般にはあまり知られていない
タワークレーン専門の特殊部隊が存在する。その名も、
タワークレーン技術指導員。
彼らの主な仕事はクレーンの組立、解体、クライミングの指導。
それだけではなく、機械の調整、修理、点検等も行う。
更にはクレーン運転士に機械の説明や運転方法の指導も。
タワークレーンに関する事はどんなことでもこなし、
絶対にミスは許されない立場におかれている。
気性の荒い鳶職人達を指導する立場、
生半可な知識と技術では、逆に指導されてしまうことになりかねない。
作業技術や知識はもちろんのこと、
指導員としての腕や人間性も問われるのだ。
機体はデリケートな為、組立解体の順序が細かく決められている。
その為、鳶職人は指導員からの手順や指導、助言を元に作業を進めていくのである。
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タワークレーン組立手順
では、どのように組立てられて、解体されていくのか。
組立ての手順は
まず、ベース架台をセット、その上にマスト(柱)を乗せ、本体をセットする。
それから本体に、ジブ(クレーンの腕)を取り付け、
起伏、巻き上げ下げ用のワイヤーを通します。
組上がった後に、クライミング、
そして監督署の落成検査を受けていよいよ稼働となります。
クライミングとは?
クライミングとはクレーン本体がマストを昇ることを言い、
下降する時は、「逆クライミング」と言われる。
大型クレーンでは油圧シリンダを用いたクライミング方式が主流で
油圧昇降シリンダの伸縮運動によってクレーン本体が
マストを昇降する事が可能となる。
昇降シリンダ(画像中央)には、
上部と下部にカンヌキが設置されている(画像右)
油圧昇降シリンダーの働きと原理
まず、下部のカンヌキをセットし、油圧シリンダを伸ばして、
クレーン本体ごと持ち上げていき、規定の高さで上部のカンヌキをセットする。
上部のカンヌキでクレーンを支えたら、下部のカンヌキをたたみ、
伸びたシリンダーを縮めていく。
油圧シリンダーが縮みきったら、また、下部のカンヌキをセットし、
上部のカンヌキをたたんで、油圧シリンダーを伸ばしていく。
このようにして、カンヌキで交互にクレーン本体を支え
シリンダーの伸縮を繰り返すことで、
クレーン本体を昇降させることができるのだ。
その他のクライミング方式
油圧昇降シリンダー他にもクライミング方式があり、
小型のクライミングクレーンで用いられているのが、
電動チェーンブロック、ワイヤロープなどのクライミング方式である。
電動チェーンブロックでのクライミングでは、
マストの最頂部に取り付けた電動チェーンブロックで、
クレーン本体をつりあげてクライミングしていきます。
このようにして組み立てられたクレーンは、
建物と共に空へ向かってどんどん上がって行くわけですが、
建物と同じようにクレーンも上げなければなりません。
このクライミングには2種類の方法があり クレーンを建物の内部に建てるか、外部に建てるかで変わってきます。
タワークレーンクライミング方法
フロアクライミング
フロアクライミングは建物の本体鉄骨を利用して、クライミングし、
最上段にクレーンのベース架台を乗せ替えることを表している。
建物の内部にクレーンを組み立てている時に用いる方法である。
ではどうやって乗せ変えてるか?だが、 絵と写真を参考に説明しよう。
クレーン本体部分を逆クライミング(下降)させ、
上画像のレベル3の位置に施工された受け架台に機体を預け、固定する。
固定したらレベル1部分に設置していたベース架台のアウトリガを縮める。
そしてクライミング開始。
本来は、油圧昇降シリンダーを用いてクレーン本体を昇降せさていく。
(油圧シリンダーは画像の赤い部分)
しかし、今回の場合、クレーン本体がレベル3の受け架台に固定されているため
クライミングすることによって、マストの方が上がっていきます。
マストが上昇するとともに、ベース架台も持ち上がっていきます。
ベース架台がレベル2の受け架台まで上がったら、
アウトリガを伸ばしベース架台を固定します。
ベース架台を固定したら再びクライミング。
今度はクレーン本体がマストを上昇していきます。
この一連の作業のことをフロアクライミングと言い、
定期的に繰り返すことでクレーン本体は建物と共に、
高く高く空に向かい上がっていくのです。
マストクライミング
こちらは建物の外部にクレーンを組み立てている時に用いる。
ベース架台はそのままで、マストを継ぎ足し、
クライミングしていく工法。
ただし、この工法だと建築するビルの高さに見合うだけの
マストの数が必要になるため、規定の高さ毎に補強を入れなければなりません。
解体時も地上まで逆クライミングしてから解体する為に、
ヤードの確保も必要となります。
マストコラムクライミング
建物の本節鉄骨柱をクレーンのマストにして立てていく工法。
この工法、フロアクライミング工法と比べて、
何処にメリットがあるのかと言うと、
ダメ穴、つまりクレーン周りの開口をなくすことができる。
開口部をなくすことによって最上階の穴がふさがるので、
下の階が、天候に左右されることが少なくなり、
早い段階で仕上げ工事に着手することができる。
更には、一般のタワークレーンのベース架台、マストが不要な為、
組立解体の工期を短縮することができる。
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タワークレーン解体方法
続いて解体方法と手順。
あの高いビルのてっぺんまであがったタワークレーン。
どうやって解体しているのか?
複数のクレーンが設置されている場合は、
最後の一台になるまで隣り合ったクレーンで解体していきます。
残った最後の一台のクレーンAで一回り小さなクレーンBを組み立てます。
そのクレーンBでクレーンAを解体。
そして更に半分の大きさのクレーンCを組んでクレーンBを解体します。
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このように組み替え組み替えを繰り返し、クレーンのサイズを小さくしていくのです。
そして一番最後には人力や本設の点検用ゴンドラを利用して解体。
最後のクレーンは解体すると一つの部材が80kg未満になります。
これを本設エレベータ、点検用ゴンドラなどで降ろします。
コレはあくまでも一例であってその現場に応じて変化します。
今ほど機械が発達してない時代では、丸太で三脚デリックを組み、
ウインチ(巻き上げ機)と滑車を応用して解体、
運搬の際にはころ引きなどを利用していた。
現在においても、接合部のボルトなどは
径が大きいために、打撃メガネレンチ等を用いて、
鳶職たちがハンマーで叩いて施工している。
いつの時代でも、最後は人の手で解体、 搬出されるのに変わりはない。
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