鉄骨鳶の仕事内容・鉄骨建方とは
鉄骨建方
我々、職人は鉄骨を組み立てる作業のことをこう呼ぶ。
建築現場では最高位にあたるこの作業。
仕事の難易度も高く、一つ間違えれば命を落とす。
鉄骨建方は「下まわり(地走り)」と「取付け」の2グループに分かれて作業し、
「下まわり(地走り)」の主な作業とは地上にて荷を吊るための段取り、
「取付け」は地上から吊ってきた鉄骨を、高所にておさめる作業が主となる。
鉄骨建方の作業手順
簡単に鉄骨建方の作業手順と内容を説明すると、
鉄骨建方は、資材・部材の搬入から始まり、
柱を建て、梁を繋いでいく。
命綱となる安全帯を架ける設備を整え、
開口部には落下防止のための、水平ネットを張り、
外周部分には、飛散防止用の垂直ネットを張る。
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そして、
仮設資材や仮ボルト、本ボルト、
スラブ材となる、デッキプレートや鉄筋材、
電気・設備用の機械やラーザーユニット、
本設エレベータのウインチなど
他業者の重量物を揚重するのも鳶の仕事となる。
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玉掛け作業のプロ『下まわり(地走り)』
まずは「下まわり(地走り)」の仕事。
鉄骨下まわり作業のメインは「玉掛け」作業になる。
玉掛けとはクレーンなどで吊りあげるために荷にワイヤーを掛ける作業の事を言う。
一見、簡単そうに思えるこの作業だが、実は鉄骨建方では最も危険で難しいのである。
それは鉄骨の大きさや形によって吊り方や、
吊った後の荷の角度にまで、気をくばらなければならないからだ。
建物の形に合わせて、取り付け作業がしやすいように角度をつけて吊ったり。
さらには地上で組み立てて、ユニットにして一気に吊り上げたり、
高さをずらして一度に何本も吊ったり・・・実に様々である。
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さらに吊り上げる前には、上部で梁をおさめた後の高所作業を
極力少なくするために、安全帯(命綱)をかけるための親綱(ロープ)、
落下養生のための水平ネットの仕込み、
開口部につく梁には、あらかじめ手摺りをつけるなど・・・・
タバコを吸う暇もないほどドタバタなのだ。
そしてなによりも荷を吊る瞬間が要注意。
ひとつ間違えれば死亡事故にもつながる。
吊り上げたあとも油断はできない。
常に周囲を確認し、自分はもちろんのこと、
周囲の人を吊り荷の下に入らせてはいけない。

まさに
油断一瞬、ケガ一生
そして、安全の次に求められるのがスピードだ。
階高が高くなればなるほど 、1フックにかかる時間も長くなる。
1フックとは地階から鉄骨部材をクレーンで吊り上げ、
高所にて取り付ける一連の作業のことをいい、
階高があがればあがるほど、クレーンの巻き上げ下げに時間がかかるようになる。
当然、フック数が増えれば増えるほど作業時間は無駄に長くなる。
搬入ミスや積み込みの仕方が悪い(必要な部材が一番下敷きになっている)など
それによっては吊り荷の取り付け順序が前後したり、
時には攻め方を大幅に変えた方が、結果的に速く終わる事になる。
クレーンを遊ばせないようにする為の機転だ。
更に、手で持ち上げられる程の軽い部材なら、
吊り角度を気にせず吊り上げる方が速くなる時もある。
(しかし、吊り角度が悪いと見てくれが悪くなる)
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鳶の仕事では安全はもちろんだが、早さと美しさをも求められる。
安全は絶対の事、「早さ」と「美しさ」のバランスが大事。
TPOによってその比率を変えていける柔軟な考え方や、
それを実行できる勇気、そして 確固たる経験が必要となる。
このように下まわりは
いかなる状況下においても常に完璧
に仕事をこなさなければならない。
そのため最高指揮者が下まわり作業につくことが多い。
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高所作業のエキスパート『鉄骨取り付け』
鉄骨建方、梁「取付け」作業
それは高層ビルの立ち並ぶ大都会の中で
人々の目に身近に映る、最も華やかで危険な仕事ではないだろうか
地上より100m以上離れた雲に近い場所での仕事。
細い鉄骨の梁の上を渡り歩く姿はまさに忍者!
空中で素早く梁をおさめる姿は
芸術そのもの

では、梁をおさめるとは一体どういう事なのか?
鉄骨はボルトによって接合される。
まずは柱を4本建てたとし、その後、柱と柱の間を梁でつないでいく。
4本の柱を梁で囲んで四角をつくり、同じ手順で積み上げる。
この様な作業が繰り返されて、建物は一歩一歩完成に近づいていくのだ。
一見簡単そうな作業だが、実は玉掛けと同様に、
奥が深い。

具体的に言うと、
柱と柱が中に傾いていれば梁は入らず、
外に広がっていればボルト接合の穴が合わない。
わずか数ミリの狂いでも、一筋縄ではいかない。
かなりの技術がないと、なかなかすんなりはおさまらない。
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そして階数が上がれば上がるほど風も強くなる。
当然、吊り荷は風にあおられ、梁をおさめるのもおろか、
取付け位置に持っていく事すら、難しい。
その過酷な条件でいかに早く梁をおさめるか、コレがポイントになってくる。
時には鉄骨自体の品質が悪いときも有る。が、そこは職人のウデと機転でカバーする。
油圧ジャッキ、ジャーナル、レバー、バールといった工具などを駆使して、
より早く、より多くの梁を取付ける。
今日もどこかの遙か上空では、
鉄骨建方と言う名の芸術活動
は行われているのだ。

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